当診療科では、すり傷、切傷、刺し傷をはじめ、咬傷(人や動物に噛まれて生じた傷)、やけどといった外傷全般のほか、巻き爪や良性の腫瘤(粉瘤や脂肪種 等)の切除、鼠径ヘルニアや肛門疾患(痔核、裂肛 など)といった疾患の診療をしています。
皮膚表面の傷であれば、たいしたことはないと思われる方が大半でしょうが、すり傷やペットにそんな強く噛まれたわけでないといった場合でも放置が続けば、感染症を引き起こす可能性もあるので、どんな小さい傷であっても速やかに処置(傷口を水で洗って、汚れを落とす など)をするようにしてください。
すり傷や切り傷、やけど、咬傷などの外傷の際、当院では湿潤療法による治療を行います。これは、傷口を消毒して乾燥させ、かさぶたを形成する従来の治療法とは異なります。まず、水で傷口を洗い流し、乾燥させずに、創傷被覆材で傷口を覆っていきます。これによって傷口から染み出る滲出液を閉じ込め、湿った状態にして傷を治していくという方法です。
滲出液には、細胞の成長を促進する効果もあるため、湿った状態を維持することで、傷を早く、かつ跡が残らないようにきれいに治すことができます。また消毒液を使用しないため、痛みも伴いません。
医学用語では痔核と呼ばれています。痔にはいぼ痔以外にも複数の種類がありますが、その中でも患者数が最も多い疾患です。いぼ痔は肛門や直腸付近の一部の血管が鬱血し、それがコブのように膨らんでしまっている状態を指します。なお、発生部位によって内痔核、あるいは外痔核と診断されます。
内痔核は、直腸と肛門の境目にある歯状線よりも内側にある痔核です。便秘、トイレでいきむ、同じ姿勢で長時間いるなどのことによって、発症しやすいと言われています。女性は妊娠や出産が引き金になることもあります。発症初期は自覚症状がなく、排便時に出血が確認されるくらいです。しかし、病状が進行し、痔核が大きくなると肛門から脱出するようになります。脱出間もない頃は、指などで押し込むと中に引っ込みますが、大きくなり過ぎると脱出したままの状態となって、痛みがみられるほか、残便感なども現れるようになります。なお、内痔核は症状の程度によってⅠ~Ⅳ度に分類され、それぞれ治療内容も異なります。
外痔核は、歯状線の外側に発生する痔核です。重いものを持ち上げるなど腹圧をかけやすい仕事をしていたり、座っている時間が長時間続いたりした場合に発症リスクが高くなります。痔核はむき出しの状態であるため、腫れや痛みの症状が現れます。また、皮膚が破れることがあれば出血することもあります。
内痔核では、上記で述べたように症状の程度によって治療内容が異なります。軽度(Ⅰ~Ⅱ度)であれば、座薬や軟膏による薬物療法を行います。薬物療法だけでは完治できない場合は、ALTA療法などの硬化療法や痔核根治術(結紮切除)を行うこともあります。Ⅲ度は保存療法で改善しなければ手術療法、Ⅳ度の場合は手術療法が選択されます。
外痔核においては、患部を温めること、薬物療法(軟膏や坐薬 等)などの保存療法が中心となります。ただし、痔核のサイズが大きいなど上記の治療では改善が難しい場合には、手術療法を行います。
正式な疾患名は裂肛です。肛門の出口付近に傷ができやすいのが特徴です。便秘が続いている状態での硬い便の排泄、下痢による炎症などによって発症します。便秘体質の女性の患者さまが多いです。主な症状は、出血や排便時の痛みです。
裂肛は急性裂肛と慢性裂肛に分けられます。急性裂肛では、排便時に痛みはありますが、傷自体が浅いため、排便時の出血も紙に血がつく程度で、治りが早いことも多いです。この急性裂肛を繰り返し発症すると、慢性裂肛につながります。再発するごとに傷が深く広がっていき、潰瘍やポリープが発生するなどして、肛門狭窄が起こるようになります。
治療は基本的に保存療法で、主に軟膏や坐薬を使用します。そのほか、便秘や下痢が原因の場合は、便通を改善する薬を使用したり、生活習慣の見直し(食生活の改善 等)を行ったりします。また、症状が進行し、肛門狭窄が起こっている場合は手術療法となります。
一般的には、あな痔と呼ばれます。歯状線にある窪みを肛門陰窩といい、この部分に細菌が侵入し、肛門腺が化膿するなどして膿が溜まっている状態を肛門周囲膿瘍と言います。同疾患は治る過程において膿を排泄するのですが、その際に瘻管が作られ、細菌が侵入した部分(原発口)とは別の出口(二次口)へと、皮膚に穴を開ける形で膿を排泄します。この原発口から二次口までが、トンネルのようにつながってしまった状態を痔瘻と言います。主な症状ですが、肛門周囲膿瘍では、膿が溜まっている部位の腫れや痛み、38度以上の発熱などがみられます。また痔瘻になると、膿の排出によって下着が汚れることがあります。
治療方法としては、肛門周囲膿瘍の状態で、膿の量がそれほど多くない、あるいは自然に放出されたという場合は、抗菌薬を服用します。また、膿の量が多く、膿が排出されていないという場合は、局所麻酔下で、腫れている部位を切開して膿を排出します。膿が無くなれば痛みなどの症状は少しずつ治まっていきます。ただし、瘻管が残ると自然に塞がることはないため、再発の原因になります。この場合は、瘻管を切除する外科的治療が行われます。
足の指(特に親指)の爪が、何らかの原因で内側に巻きこまれた状態を巻き爪といいます。巻かれた爪が皮膚に食い込んでしまうと陥入爪と診断されます。靴による圧迫、激しいスポーツ、外反母趾や開帳足に伴って起こるとされています。主な症状としては、爪の周囲に炎症や肉芽などがみられるほか、化膿することによって痛くて歩けなくなることもあります。
炎症や肉芽がみられる場合は、ステロイド系の外用薬や抗菌薬の内服による薬物療法を行います。なお、巻き爪そのものに対する治療には、保険診療と自費診療があります。自費診療の一つであるVHO式は、丸まろうとする力を逆に利用して矯正する治療法で、爪の左右にワイヤーを引っ掛け、爪の中央に巻き上げていきます。装着期間は1年程度を要し、3ヵ月に1度の間隔で通院し、ワイヤーを替える必要があります。